実に10カ月ぶりの出動となった。

知床岬でシリエトクと叫んで 完全燃焼、西伊豆や能登など近場で行っていないところはあるけれど、知床以上の感動を与えてくれるとは思えず、これ以上を求めるならば利尻礼文や沖縄か。しかし離島へはフェリー代やアプローチ日数があまりに掛り過ぎ、今の仕事を続けるならば定年後の夢でしかない。

 キャンピングカーの楽しみはもちろん旅をすることにあるけれど、私の場合装備を工夫して製作することが大きな楽しみになっていて、装備によって旅のスタイルまでが変わっていく。旅をするとこんな装備があったらいいな、と思い、製作するとこの装備でこんな旅のし方もできるな、となって無限に可能性が拡がっていく。知床岬の冒険 はそんな繰り返しの1つの到達点で、何百点という装備のひとつひとつが精密に機能し合って初めて成し得たこと。冒険の成否は常に出発前に決まっていて、現地で頑張ることは何もない。

 このHPのタイトルには、そんなモノづくりの純粋な楽しみという意味を込めている。
 挑戦を終え燃え尽きたあしたのジョーのように10ヶ月間真っ白になっていたわけではなく、実はモノづくりの新たなステージへと没頭していたのでした。

 温水ガスボイラーにエンジンの熱を利用したヒートエクスチェンジャー を補助熱源として取り付けたけれど、温水や冷却水の温度を監視しながら温水ポンプと冷却水の両モーターを制御するにはどうしたらよいか、最初はサーモスタットとオペアンプによる差動回路でと考えていたけれど、水圧も監視しなくてはならずパラメーターが多すぎてアナログ論理回路では複雑になり過ぎる。

 気は重いがついにデジタル回路の勉強を始めたところ、PICというマイコンチップが100円前後で簡単に手に入り 、PCとUSB接続してモーターなどの機器を簡単に制御できることがわかった。しかもC言語の開発環境が無料提供されているし日本語データーシート もタダで手に入る。こんな環境が5年も前から整っていたなんて、何やってたんだ俺。失われた5年間を取り戻すかのように毎日データーシートをむさぼり読み、ネットで先人の回路を模倣して幾つか試作、PCから自在に温度センサーやモーターを制御できるようになった。

 コンピュータープログラムは仕事で開発しているし、アナログ回路は小学生から半田ゴテ握っていたので、新たに覚えることは思ったほど多くなかった。

 ロデオにはすでに車載PC とUSBハブを張り巡らせているので、後はセンサー類を取り付けるだけ。PICはwindowsだけでなくandroidとの接続も可能なので、android携帯の普及次第でキャンピングカーを総合制御するアプリを開発すれば充分採算がとれるプロジェクトになりそうだ。ここにキャンピングカーマイコン制御計画 を発動する。
 邪まな野望に胸をたぎらせていたけれど、技術レベルとしては高くなく大企業なら数日で開発可能なレベルだし、単にキャンピングカー市場が狭いから誰も作っていないだけ。太陽光パネルとリチウムイオンバッテリーが普及価格になれば電力不足は解消し管理アプリも不要だろう。

 ここはひとつ頭を冷やしに北へ向かうことにした。

 リッチ?な船旅を求め、少々お高いけれど太平洋フェリーで苫小牧へ。
 しかし船内は坊主頭の迷彩服で埋め尽くされ、バカンス気分など微塵も味わえない。せっかく奮発して1等室を取ったのに隣室は士官で小隊長どもがひっきなしに点呼、報告に出入りしうるさすぎ。災害復興支援はわかるけれど、庶民が薄給からやっと捻出して年1回乗れるかどうか、海外旅行も行けるほどの運賃がかかる日本有数の豪華客船を軍隊が税金で徴用するのはいかがなものか。3K仕事に就いているのは自衛隊だけではないし、豪華客船で優雅に経費と時間を使いまくって出張する民間企業などない。海自の輸送艦を港に錆つかせて置かず、こういう時こそ訓練を兼ねて運用したらよいと思うけれど、陸軍と海軍が権限と予算の奪い合いで不仲なのは帝国時代からの伝統か。屁理屈付けて平気で民間徴用するのも国家総動員法 の流れ、今の政府なら十分このような立法は可能だ。美人クルーが若僧に深々と頭を下げているのをみると、税金泥棒に追い銭くれてやるこたぁない、と思うけれど、お国に敵うはずもない、せいぜい国を見習って職権濫用と節税に努めることにしよう。

 初の1等室はかなり良かった。大手ビジネスホテルと同等の部屋だけれど、移動しながらこれだけリラックスできるのは感動もの。さっと朝シャンできたり、いつもの2等寝台とは格が違う船旅を堪能できた。
 いつもは広大な風景と静寂を求め道北か道東へ向かうけれど、今年は7月上旬なのでまだ寒いし、いつも札幌が近く人が多そうだという理由で避けていた道央に、夏休み前だし、ゆっくり滞在することにした。

 まずは西の知床とも賞される断崖と積丹ブルーで有名な綺麗な海を求めて積丹半島へ、と思ったけれど、出発時から右フロントブレーキからシャリシャリ音がしていて、1年ぶりに動かしたのでパッドに錆でも付いているんだろうと気にせずいたら、次第にゴーゴーという低い音に変わってきた。給油時にホイールを見たら大き目の鉄粉が。これはヤバいとフェリー埠頭のすぐ近くにあるいすゞ苫小牧へ、パッドが無くなってローターも逝っちゃってますね。との診断。小樽まで持ちますかと聞いたら、ブレーキ使わないなら、と即却下。

 ブレーキパッドは交換 してから2万kmしか走ってないし、今まで乗ってきた車ではどれも10万kmは持っていたので無くなるはずない、と思い込んでいたので前回のユーザー車検 でも残量チェックを怠り、さらにシャリシャリ音はパッド残量警告の爪が当たっていると判断できなかった愚かさに落ち込み。前回のブレーキパッド交換 は走行3万km時でこの減り方はメーター戻し車かな、と思っていたけれど、キャンピングカーは重量があるし常に満積載状態だから減り方が異常に速いだけだったんだ。今回さらに減りが早かったのは前オーナーはバイク積載したり水400ℓ積んだりバカやってないからだろう。
 せっかく北海道に来たのにいきなり気分最悪状態。

 1年ぶりの運転とフェリーの予約があるから仙台へ向かう途中で引き返せない、というのも判断を鈍らせた。久々の運行前に一度近場で準備運動すべきだった。

 いすゞ苫小牧ではパッドは数日で来るからそれまで敷地内に滞在しても、と言われたけれど、産業道路に面した環境に留まる気もせず、エンジンブレーキとハンドブレーキだけで支笏湖の美笛キャンプ場へ。苫小牧から支笏湖へは交通量のない1本道で交差点も数カ所で30分程なので、鉄板切削ブレーキを使う必要もなく辿り着いたが天気は小雨。テンション最悪状態でふて寝。
 美笛キャンプ場は1泊千円で、P泊派には少々お高いけれど環境は抜群。支笏湖には他にも湖畔に面したP泊地があるけれど、1千円の価値は十分にある。サイトからすぐカヌーが出せるというのは最高で3泊してしまった。
 天気はいまいちだったけれど、2回ほどカヌーを出してみた。

 支笏湖での船外機使用は許可制とのこと、たまにはパドルでノンビリ漕いで回るのも悪くない。湖周は40km程あるけれど湖岸に国道がないのは美笛からポロピナイまで10km程度なので動力に頼らず静穏を楽しむほうが賢明。

 GPSで速度を測ったら、4km/h程度。カヤックの半分位しかスピードは出ないけれど、ボートとカヌーの合いの子みたいな船体形状ではこんなものか。
 しかし水が抜群に綺麗なのでのろさも苦にならない。

 さすが透明度国内4位は伊達ではない。岸から離れるときは水底との距離が拡がる感じがまるで飛行機で離陸している時のような内臓が持ち上げられる錯覚まで感じた。

 ちなみに透明度1位は摩周湖25mだけど湖岸には立ち入れず、2位然別湖、3位倶多楽湖と4位支笏湖は19~18mでほぼタイ2位といっても良い。いずれも北海道の湖だけれど去年漕いだ屈斜路湖 はまるで勝負にならない。

 こういうところを漕いでしまうともうダム湖 では漕げないな。人間はなんて欲深いんでしょう。
2時間弱漕いでオコタン岬へ。

水の色が半端なく碧い。沈んだ巨木が幻想的な世界を演出する。
  ダム湖 とは違い上陸場所には困らない。

 大自然を堪能しつつ、静かな湖畔で昼食を取る。
 ブレーキパッドが届いたので再びいすゞ苫小牧へ。
 工賃込3万円と言われたけれど、自分でやるからブレーキピストンツール貸して(←嫌な客)とお願いし駐車場で30分程で交換完了。5000円程度の社外品で12000円取られたけど飛込みでは仕方ない。それでも外車を購入していたら こんな簡単に修理はできない。少々ダサくてもやはり国産車の有難みを感じた。ローターも1/4程削れていてブレーキングでハンドル取られるしキックバックも感じるので帰ったらローターも交換しないと。3万円の無駄な出費。

 さて、なんとか普通に走れるようになったので積丹半島へ。港以外で浜に降りれるところはほとんど無かったけれど執念で余別川の河口に絶好のP泊地を確保。目の前の見事な積丹ブルーをパンクベットの高窓から存分に楽しむことができた。

 めったに使うことのないロデオのパートタイム4WDの威力を存分に発揮。

 2駆なら間違いなくスタックの場所だけれど、スーパーロー4駆まであるので岩を丁寧にひとつひとつ乗り越える感じで不安なく進むことができた。

 ここは入口から急斜面の未舗装路だし、平らなスペースは全く無いので2駆車は入らないほうがよい。フルタイム4駆も浮き石が多いので速すぎて跳ね石でミッションケースに穴が開く。スタックして地元に迷惑かけて閉鎖されるのは最悪なのでできるだけ立ち入らないようお願いします。
 最近のキャンピングカーは2駆ばかりだけれど、自然と一体になるのがキャンピングカー最大の魅力なのだから4駆は必要不可欠。数m進めるだけで車窓からの景色も天地の差だし、カヌーは特に準備撤収に浜と車の間を10往復以上することになるので水際に1mでも近づきたいのが正直なところ。パートタイム4駆は普段の燃費も抑えることができて最高なのに、クロカン4駆全滅の現代ではベース車がないのでロデオは大事に維持していかなくては。いすゞさん部品供給を今後もよろしくお願いします。
 目の前は積丹ブルーの透き通るプライベートビーチにして天然の良港。

 カヌーキャンプには絶好で、この巡り合わせにはブレーキトラブルの不運など吹っ飛んだ。

 無料の野塚野営場からもカヌーは出せるけれど、駐車場から水際まで砂浜が50m位あって準備撤収だけで疲労困憊しそうだし、駐車場の傾斜がきついのでP泊もイマイチ。今回は給水にだけ利用させてもらった。
 早速出航したところエンジンがかからずガソリンコックを開けた途端ガソリンがダダ漏れ。

 すぐ引き返し船外機のカバーを開けたらキャブレターのメインジェットからガソリンが吹き出ている。フロート室を開けフロートバルブを見たら下がった位置で固着していた。軽く指で押したら治ったので、昨年冬になる前にフロート室のガソリンが腐らないようドレンボルトを緩めてガソリンを抜いたまま半年以上そのままだったので固着したらしい。

 組み直したら漏れは完全に止まっていてエンジンも掛ったけれど、こんな綺麗な海をガソリンで汚してしまった。バイクではフロート室のガソリンが腐ってジェットが詰まることはあったけど、フロートバルブが開いたまま固着は数年放置のバイクでも経験がない。ミクニやケイヒンではなく中華安物キャブを採用しているトーハツさん、海洋汚染に直結するので採用基準上げてください。実売6万円ではしかたないけれど、キャブ内部も鏡面仕上げがされてなく見るからに粗い造りだからちょっとの放置で固着してしまうだろう。世界のトーハツでさえこれなのだから、1万円の中華安物船外機のクオリティなど想像しただけで海で使うのは怖ろしい。

 フロートバルブとフロートピンは無くし易いので予備を持っていたほうが良い。ゴミが詰まってこのような症状が出ることもあるので、いざというときは海上でもキャブとプラグ位はメンテできなくては命にかかわる。
 どーん、神威岬。

 これほど岬というものを痛烈に感じたことはない。
 峻烈な地形と対照的な海の色。

 中央に遊歩道からの降り口があり、歩いている人に羨ましがられようと近づいてみたけれど誰もいなかった。

 大自然に比べ人の心のなんと小さいことよ。
 神威岬へは15分程だけれどゆっくり見て回り景色を堪能しいったん帰港。

 車窓から明日目指す積丹岬を眺めながら、北海道最後にして最高の夜を過ごした。
 積丹岬までは道路と港湾施設ばかりで、向かい風に波もあってずぶ濡れになりヒイヒイ言いながら1時間弱で岬を廻り込むといきなり別世界へ。

 鏡のような海面を滑走しながらこの世のものとは思えぬ絶景を堪能する。

 スケールでは知床岬 には遠く及ばないけれど、知床に多かった定置網やブイなどがなく、秘境感はなかなかのもの。
 海の色、透明度は知床岬 よりずっと素晴らしい。

 圧倒的な自然に挑戦するという感じではなく、美しい自然に優しく抱かれる感じ。
 切り立った崖と鬱蒼とした森に囲まれた美しい浜、浜婦美に上陸。
 
 秘境感満点で、奥には独自の文化を持った民族がいるんじゃないか、という気までしてくる。そう、ちょうどパイレーツ・オブ・カリビアン2、デットマンズチェストで出てくるジャカルタの浜のような世界観。映画では砂浜だったけど、海の色は映画より綺麗。
 先にも絶景が続いていたけれど、本日のフェリーに乗るので後ろ髪ひかれながらも引き返す。まぁ何事も腹8分目がよろしいようで。
 
 今回の旅のフィナーレにふさわしかった、島武意海岸。

 地獄のような派手な色彩と形状の岩壁と、天国のような海の色と透き通る海底の対照が美しく、もはや現世の物とは思えない。

 何故かカメラのレンズが曇ってしまったのも妖精のいたずらか。

 1時間ほどのんびりと岩礁の間を巡り、美しい海を堪能した。
   広大で荒涼とした道北や道東こそ北海道らしく感じていたけれど、道央エリアの自然は優しく美しい。今回は2カ所に滞在しただけになったけれど、どちらもすばらしい泊地に恵まれ充実の旅ができた。

 今年はしばらくキャンピングカーマイコン制御計画 に没頭することにして、後は能登と西伊豆くらい行けたら十分かな。キャンピングカーのある暮らしも10年になり、回数よりも質を求めるようになってきた。維持費だけで年間15万円位かかるから、1泊あたり2万円以上という贅沢な遊びだけれど、キャンピングカーでなければ絶対得られない感覚があるので、更に研ぎ澄ませていきたい。

 
   


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