カヌー をはじめて半年、中間目標に掲げていた知床岬に思ったより早く立つことができた。

先月の釧路川上流域 で初めて沈の恐怖を知り、水の流れのなかで転覆したカヌーを足の付かないところで立て直すのはほぼ不可能なことがわかったので、岬の突端を目指すのは相応の準備をしてから、と思っていたけれど、天候が安定したので運良く目標を達成することができた。

強風、うねり、暗礁、ヒグマなど数々の困難はあったけれど、知床岬灯台からの展望は生涯No.2(No.1は利尻山頂)の素晴らしい体験になった。
さて、先月同様太平洋フェリーで苫小牧に上陸、半日で知床までドライブはきついのでお気に入りの釧路の来止臥野営場 から知床入りするも天気は小雨。相泊温泉で荒れた海を眺めながら熱い湯に浸かる。ルサ川の河口にカヌーが出艇できるP泊地を見つけ1泊するも天候は回復せず。

羅臼から相泊までは23km程もあるけれど、海岸沿いは防波堤と漁業施設ばかりでカヌー が出艇できそうな場所はない。環境省のガイドラインではシーカヤックによる半島周回を禁止はしていないけれど、漁業施設からの出艇は禁止している。実質禁止ということ?唯一相泊温泉の脇からは出艇できそうだけれど、防波堤から海岸に下る階段は急傾斜でカヌー を担いで運ぶのはかなりきつそう。河口まで50mほど浅瀬を引きずることになるけれど担ぐよりはマシなので、相泊から8kmほど引き返したこの場所から後日出艇することに決めた。
羅臼側より斜里側の方が晴れている確率が高いので、知床横断道路でウトロへ移動。
岩尾別温泉「地の涯」で無料開放している露天風呂に入浴しながら情報収集。湯はぬるめだったけれど美しい林のなか開放感に溢れ森林と温泉同時に浸かっている気分が味わえた。

町営のオロンコ岩駐車場からカヌー 出艇OK(自己責任でとのこと)、国設知床野営場でキャンピングカーの乗入OK(繁忙期はダメとのこと)を確認できたけれどまだ昼前だったので、先月訪れて最高だった屈斜路湖のP泊地 に向かう。
さっそくカヌー を出して20年ぶりに釣りをしてみた。

いつもは貧乏性のためカヌー 上でのんびりと景色を眺めていることができなくてもっとよい景色はないかとウロウロして結局疲れてしまうけれど、竿を出すとじっとしている理由ができて心が落ち着き、癒される。
人がほとんど入らないところなのでまったく擦れていないのか入れ食い状態だったけれど、全てウグイでほとんどは10cm前後なのでリリース。マスを釣りたかったけれどポイントの情報収集しないと無理かな。それでも魚との1本勝負はやはり楽しい。20年ぶりのアタリ感覚は本能を直撃する。

こいつは1度は餌だけ取られたけれど、2回目の格闘戦では引っ張り回して疲れたところをGet!
炉ばた大将 で30分ほどじっくり火を通してからかぶりつく。
扇風機で自作したルーフベンチレーター のおかげで煙りも籠もらず快適。

味はウグイなので・・・釣って捌いて焼いて食う、他者を食い物にして成り立っている否応ない事実を噛みしめる。
北海道入りして5日目、ずっとぱっとしない天気だったけれどついに待望のお天道様がお目見えした。

国設知床野営場から5分の町営オロンコ岩駐車場に移動。駐車料金はマイクロバスを適用されるかもと思ったけれど、普通車料金(1日400円)でOKだった。

駐車場裏手はすぐ港内になっていて、20mほどカヌー を担ぐ必要はあるけれど平坦なので1時間ほどで準備完了。
港を出るとすぐに奇石断崖が連続する。
高さ100mにも達する断崖と海の色のコントラストが怖いくらいの美しさ。
カヤックとすれ違った。今回の旅ではこの1回きりだった。

景色は素晴らしいのだけれど、観光船が入れ替わり10隻位ひっきりなしにやってきては大音量の外部スピーカで講釈を垂れているのがいささか閉口。見ればわかる風景に解説なんか必要ない。
カムイワッカ湯の滝。

硫黄分で海中まで黄色くなっているけれど、さすがに海水の温度までは変わらなかった。

上流には超有名な野天風呂があるけれど、超有名だとなぜか行きたくなくなるアマノジャクのため未だに行っていない。最近は年のせいかいいものはいいと思うようになってきたので、今回準備はしていたけれど結局行き損なった。
ヨウシベツの滝。ずっと断崖が続くので滝はいくつもあるけれど、この滝は特に美しかった。
断崖を縫うように落ちていく瀬。
この滝もすごいがここに番屋をつくる人間はもっとすごい。

後で調べたら水力発電しているそうだ。なるほど。
巨大な岩が連続する。どうやってこんな地形ができたのだろう、浸食?火山活動?大きさも100m近くなので直下を船で通るとものすごい迫力。
まるで城塞のような威厳を感じる。

このあたりにはもう観光船の姿はなく、人間の世界とは違う世界に迷い込んでしまったよう。
恐竜が歩いていても全然おかしくないスケール感。

実際その頃から全く変わっていないのではないか。

さすがに恐竜はいなかったけれど、沢沿いをへつっている黒い物体は、もしや・・・。
やっぱりこの世界の主、ヒグマだ。

親熊1頭と子熊2頭。あんな急峻な岩の上を難なく歩いている。100m7秒で走るらしいし、陸上では絶対会いたくない。泳ぎも得意らしいから船外機のスピードに追いつけるとは思えないけれど怖くてかなり距離をとる。
しばらく観察していたけれど、かなり距離もあるし近づくのも刺激しそうだから先に進むことにした。目の前の変わった形の岩を観察していたら・・・。
・・・こっちにこないでくれぇ。

昼飯の三色団子の臭いに釣られているのか、それとも・・・俺?
やっと諦めてくれたらしい。

被捕食者の恐怖を初めて味わってしまった。

ヒグマは動物園や登別クマ牧場で見たことはあるけれど、大自然の中で見るヒグマは全く威厳が違う。
日本に奇岩断崖の海岸は数多くあるけれど、それを10カ所分くらい集めてスケールを倍にしたよう。
カシュニの滝。面白い形をした滝壺なので入ってみたかったけれど一瞬で沈するだろうな。
知床岬まではあと1時間といったところだけれど、雲がかなり出てきたし12時で引き返すと決めていたので後ろ髪曳かれる思いで帰路を取る。

帰りは寄り道せず1直線の航路を取ったので2時間程でウトロに到着。ルシャ川の吹き下ろし強風を警戒していたけれどベタ凪でまったく不安のない航海だった。行きはいろいろ見て回ったので4時間以上かかった。一切寄り道しなければ岬までの往復も可能だったけれど、それももったいない。海賊湾には行きたかったけれど、ヒグマにも会えたし良しとしよう。

さて、小雨の中16時には撤収完了し、明日の天気予報は晴、波の高さ1mと絶好のチャンス。朝5時起きで疲れていたけれど再び知床横断道路で相泊に戻り、3日前チェックしておいたルサ川河口のP泊地に夜8時頃到着。今日の海況と同様なら明日はもしかしたら知床岬に立てるかもしれない。しかし羅臼側はウトロ側より天候が変わりやすく波も立ちやすい。無理は禁物、だ。
   

知床岬でシリエトクと叫ぶ

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