狭い室内にすぐ籠ってしまう湿気、熱気やにおいを抜くために、ルーフベンチレーターはキャンピングカーにとって原発のベントと同じくらい必要不可欠。

専用品として「ファンタスティックベント」や「ターボベント」などが有名だけれど、たかが換気扇が3万円もするのはそのネーミングセンスと同じくらい理解不能。「ターボ」というからにはもちろん排気でタービンを回して圧縮した空気を吸気させ効率を高めていると思いきや、写真を見る限りそのような装置は付いていないよう。どちらにしろベントごと交換するのは面倒なので、扇風機を分解して取り付けることにした。

購入当初よりファンが元々無かったが、自然通気と採光でそれなりに役立ってはいた。配線とモーター台座は付いていたので適当な後付けファンを探し続けてはいたけれど、なかなか手頃な12V駆動のファンが無かった。カーショップにはクリップ型でシガーライター接続の小型扇風機がよく売っているけれど、羽直径が10cm位しかなく風量が不足している上に五月蠅いので寛げない。
開口部は30*30cmなので、25cmくらいの羽で低回転でも風量十分なもの、採光を妨げない透明な羽が理想。
計画停電のおかげ?で乾電池駆動の扇風機が市場に出回っていることを知り、2500円と安かった「フカダック折りたたみファンFC-1018」を2つ購入した。

ACアダプタの表示を見ると12V1Aだったので、1つはシガーライターソケットを取り付けて普通に卓上扇風機として使用し、もう1つは分解してルーフベントに取付ることにした。

羽直径は20cm程度と少しちいさめだったが、透明で採光を妨げないし、3段階に風量を切り替えられる。後は吸気と排気を切り替えるスイッチを取り付ければ完璧。
位置決めをしてみると、ベントを開くための操作ノブが邪魔になることがわかったので、操作ノブを一番端まで移動させることに。メンドクサ。

ポン付けで2時間くらいで付けられると目論んでいたが、さっそく甘さを思い知らされる。
操作ノブを移動させるには中央を縦に通っているアルミアングルの竪穴を拡張する必要があった。グラインダーなら一瞬だが室内に切粉を撒き散らしたくないしヤスリでは日が暮れる。ハンドニプラーという薄板切り工具があったことを思い出しキコキコ切断した。切断は5分で終了したけれど構造の理解及び対処法の思考に1時間以上かかってしまった。

羽のサイズがもう少し大きいほうが良かったか、と思ったけれど、ベント操作ノブのスペースを考慮するとジャストサイズだった。
DCモーターといえば小学生の頃のタミヤのプラモデルに付いていたマブチモーターしか知らないので、プラスとマイナスを逆接すれば反回転するはずと、制御基板とモーター間の赤黒配線を何の疑いもなく逆接したところ、数秒でバチバチという音とともに制御基板のパワートランジスタが焼けてしまった。

ふと思い出して電子工作雑誌のモーター特集を読み返すと、DCモーターにはブラシモーターとブラシレスモーターがあり、ブラシレスは逆接すると壊れると書いてある。反回転させるには制御ICが反回転の機能を持ってないと不可能らしい。ブラシがないのにどうやってコイルに断続電流を流すのかというと、磁気素子が永久磁石の位置を捕捉しスイッチング素子でコイルごとに電流制御するそうな。低騒音、高効率、長寿命と素晴らしいことづくめだが、そんな高価そうなモーターが中華安物扇風機に付いているとは思いもよらなかった。そういえば風量3段階切り替えもてっきりセメント抵抗で電流制御しているかと思いきやしっかりパワートランジスタでスイッチング制御しているので電力の無駄がないし、最近のMade in chinaは恐るべし。安物と思ってなめていました。

ここでまた1時間のロス、甘さを思い知らされる。
吸気排気切替機能は諦めたけれど、このまま取り付けると吸気しかできない。どちらかといえば、というより9割は排気目的なので反対に取り付けようとしたがアルミアングルの上はベントの開閉リンクがあり機構を大幅に変更しないと羽が当たる。仕方ないので羽の中央をホールソーで貫通して無理やり羽を逆向きに取り付ける。羽の強度は多少落ちるけれど許容範囲内でしょう。

先ほどお釈迦にした制御基板の代わりに、100均ショップのシガーライター携帯電話充電器を使用して低速回転もできるようにした。切替スイッチを含めると400円の余計な出費と1時間のロス、もったいない。

100均ショップのシガーライター携帯電話充電器の中身は12V→5V500mAのDC/DCコンバータで、パワートランジスタ内臓で昇圧降圧自在の便利IC、MC34063が使用されている。分圧抵抗を1本変えるだけで3V~9V位まで電圧を変えられるので(厳密にはコイルも変更する必要があるけれど実用許容範囲内)キャンピングカー内の電子機器を動かすのに多用している。分圧抵抗を可変抵抗に変えれば無段階スイッチング制御も可能だし、基盤の流用は無理だが部品はそのまま回路を組み変えれば昇圧(15V~)も可能。変換効率は80%程度であまり優秀ではないけれど、100円というのは魅力的。欲をいえばドライブ能力が倍あればノートパソコンも動くけれど、パソコンの省電力化が進めば500mAでも動くようになるかも知れない。
音は静かで風量も十分。これでダイネットに設置した炉ばた大将 で心おきなくジンギスカンが焼ける。

今回は安物中華製品となめてかかったためとんだ失敗をしてしまった。きちんと回路構成を調査しておけば、丸1日も費やす必要はなかっただろう。中国製だからといってもはや安かろう悪かろうという時代ではないようだ。中国への畏敬を込めてチャイナスティックルーフベントと命名した。
   


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