東日本大震災ではロデオに搭載していた発電機 が大活躍した。

地震発生時職場に居たが、大した被害もなかったので定時に帰宅したところ、アパートの住民が皆外に出てガヤガヤやっている。何だろうと思い家に入ると電気が点かない。家から車で15分の職場では停電していなかったのだが、見回してみると自宅周辺は皆停電している。
すぐにロデオから延長コードで屋外にある給湯器と暖房熱源器に接続し、玄関からもう1本引きいれて室内の電源とした。
とりあえず落ち着くために床暖房 のスイッチを入れ風呂に入った。

外はもう真っ暗だが駐車場からは大勢の人の話し声が聞こえる。真っ暗な部屋の中にいても落ち着かないのだろう。喋って気を紛らわせても体が確実に冷えていくだけなのだが、風呂も暖房も使えないのだろうに。

別に優越感に浸っているわけではなく、こちらも今後の対策を練るので精いっぱいだ。暖房は灯油がまだ100リットルはタンクに入っているし、カセットガスボンベも50本位はある。ロデオのLPG は5kg2本満タンだし軽油も満タンで燃料に不安はない。発電機 のガソリンも5リットルあるので1リットルで2時間から4時間程度稼働できるから20時間弱は大丈夫、バイク用のハイオクガソリンが10リットル携行缶 にあるのでそれを足せば当面大丈夫。水は今は出ているがいつ断水になるかわからないのでロデオの水タンク400リットル は満タンにしておこう。

とりあえず断水が心配なので米を大量に炊き冷凍することにした。停電が続いてもロデオの87リットル3way冷凍冷蔵庫LPG 10kgあれば数カ月は使えるし、発電機電子レンジ も使用できる。自宅は割高なLPGの使用を数年前から止めて、給湯器をLPGから灯油に切り替えたときにガスコンロもカセットコンロに切替えているので問題ない。アパートのLPGはボンベとの間に電磁弁シャットダウン機能付マイコンメーターが使われているので、停電するとガスも使えなくなる。

さて、夕飯もいつもどおり炊事して腹に収めると、することもないので夜9時前だがもう寝ることにした。3月とはいえ北関東の夜は零度まで冷え込む。風呂も暖房もガスも使えない隣家には悪いが、死ぬほどのことでもないのでこちらから声を掛ける必要もないだろう。

発電機 を止めに外に出ると、真っ暗な街のなかでロデオの発電機 の音だけが響き渡っていた。電気が復旧したのは夜中の3時、約12時間停電していたことになる。

次の日、余震で夜中に何度も起こされ寝不足気味で朝8時頃起きると、アパートの駐車場にはロデオを除き1台の車もなかった。こんなことは初めて。最初は理由が解らなかったが昼過ぎにペイント薄め液を買いにホームセンターに行き空の棚を見て全てを理解した。皆物資の買い占めに朝から家族総出で血眼になっていたのだ。私は思い立ったらいつでも1週間くらいのキャンピングカーキャラバンに出られるよう食料や燃料を確保しておくのが習慣になっているし、昨日の夜も風呂に入り暖かい飯を食べていたから大した焦りもなかった。それでも余震が続く中今後の不安は感じていたから、真っ暗のなか寒さと空腹と余震のトリプルパンチに備えがない人の焦りは相当なものだろう。皆が街を無駄に走り回っている間、私は予定通りロデオのマフラーの錆落とし をしていた。

福島第一原発が水素爆発、炉心融解だそうだ。隣県とはいえ自宅から200kmは離れているがメルトダウンとなればそれなりの放射線が降り注ぐことになるだろう。ロデオで関西まで逃げることは可能だが、現実問題として職場放棄はできない。差し迫った時自分の命と社会的責任のどちらを取るかはその時にならなければわからないが、避難生活が可能ということは正直安心感がある。直接の震災被害者以外にも、原発20km圏内の18万人が避難生活を送っている。金持ちは関西以西のホテル暮らしも可能だろうが、ほとんどの人は隣町の体育館で余震と放射能の恐怖に怯えながら風呂も暖房もない暮らしだろう。金があっても物が買えない状態だ。被災地でなくても皆買占めに走り、数時間で必要なものは店から全て消える。移動しようにも電車は止まっているし、ガソリンスタンドは在庫切れで閉店だ。小金などあっても全く役に立たない。


このロデオがあれば、例え瓦礫の山に道を塞がれようともオフロードバイク で、水害で孤立してもカヌー で、物資の調達や脱出が可能だし、長期の避難生活もキッチントイレ 、シャワー、暖房付きだ。まぁそれは冗談としても、月一のキャラバンが楽しみながらの避難生活訓練と災害備蓄品チェックになっている。災害備蓄品を常に用意しておくといっても、カンパンも1年経てば食べられないし、10年に一度も使わないようなものをいつでも使えるようになんてことは不可能だ。所詮喉元過ぎれば熱さを忘れるのが人間。

私がこういう遊びに充実を感じるのは、ライフラインを他人の手に委ねている日常の便利で快適な生活に漠然とした不安があるのだと思う。時々全てを自分の管理下に置くことで自信を取り戻すことができ、等身大で整然とした思考ができる大事な時間だ。

近い将来必ず起こる関東大震災に、備えあれば憂いなし。


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