それは釧路川沈道中 の帰りのフェリーに乗るため、苫小牧へ向けて国道336号、通称ナウマン国道という、広大な原野のなかをひたすら突っ走る道上で起こった。

北海道旅行に行って一番嫌なのがこの帰りのフェリーへのアプローチだ。旅が終わってしまう寂しさと、まだ最終日ではないので旅気分を粘る気持ちから、フェリーに乗り遅れたら大変なのについつい寄り道してしまう。1週間程時計を見ることもない生活だったので、時計を見ると現実に戻される気がして時間が経ってしまう。結果日が傾きはじめてから慌ててノンストップで苫小牧へ全速疾走して出航時刻の30分前にフェリーの係員に謝りながら乗船することになるのが毎年のパターンだ。

今年も学習能力がないため、ナウマン国道を地元車並みのスピードで疾走していた。洗濯機 で溜まった洗濯物を洗濯しながら走行していたため、水タンク400リットル満タン、排水タンク100リットルも満タン、カセットトイレ も1週間分のブツが満タン。リヤキャリア にはバイクと船外機、ルーフにはカヌー 。超過積載状態で乗用車並みのスピード、当然多少の危険や車体のゆがみは感じたけれど、フェリーに乗り遅れる恐怖心が勝り、アクセルを踏み続ける。

ナウマン国道は信号も坂もなく、人家も全く無いような交通量のほとんどない道が100km近く続く。そんな道だから大型車も結構なスピードを出しているので路面は傷んで波打っているところも。しかも浦幌あたりで一時内陸に入っていくのでいつも最短距離の海沿いの道道を選ぶけれど、何故か砂利道が3km程ずっと残ったままになっている。昆布台の砂利道をガタガタめいいっぱいアクセルを踏み通過し、またナウマン国道に戻りしばらくいったところで頭上からバキバキという音がしたかと思うと頭上から光が差し込んだ、いや違う、巨大なパンクが運転席から分離して頭上でゆらゆら揺れている。ついに空中分解か!
一瞬ロデオのキャビンが後方に落下し、運転席とフレームだけが走り続けている図が頭の中に浮かんだけれど、よく考えれば運転席もキャビンも同じ2本の鉄骨の上に乗っているのだからそう簡単に分離するはずがない。

停止して車体下を覗き込んだけれど、フレームとキャビンの接合は問題ないようだ。パンクが運転席から1cm弱浮きあがって、カヌー のバウを固定していたロープが後ろに引っ張られて隙間に喰いこんでいる。リヤオーバーハングにあるバイクと排水タンクの重量がリヤタイヤを支点にシーソーのようにパンク接合部に掛り、そこにカヌー にかかる風圧を支えているロープが食い込み上下に分離したようだ。

とりあえずゆっくり走ればなんとかなると判断。しかしフェリーの時間もあるので結局通常ペース弱で走る。しかし段差を通過するとパンクが前後に最大1cm程ゆらゆらと運転席とは別の動きをして心臓に悪い。生きた心地がしなかったがなんとか自宅まで辿り着いた。
次の週に早速修理に取り掛かる。

モールはビス2本程度ずつで留まっているだけなので、すぐに外せる。
下の2本は留まっているけれど、上の2本はリベットの頭が飛んでフリーになってしまっている。

垂直方向のリベットは全て頭が飛んでフリーになっていた。

もともとリベットは水平方向のずれを留めるには有効だけれど、垂直方向に引き剥がす力がかかると簡単に破損してしまう。ハンドリベッターで接合できる4.8mmのサイズなので、テコの原理を利用しているとはいえ握力程度で変形する程度の薄いアルミの変形による接合なので強度はたかが知れている。しかも間隔は10cm程もあり、全部で30本程度しか使用されていない。

ただ、母材も薄い鉄板なので、あまり強い強度で止めてしまうと母材のほうが変形し、ドアの立て付けが悪くなったりフロントガラスが落ちたりするかもしれない。リベットはヒューズのような役割なのかも。とりあえず母材の変形や破損が見られなかったのは幸いだった。
頭が飛んだリベットを除去して新しいリベットで留めるためには絨毯が邪魔なので、100円ショップのタガネで剥がしていくが、強力な接着剤で張り付いているのでなかなか剥がれない。真夏の狭い車内ではすぐ汗だくになってしまう。
人力では埒があかないので早々にあきらめ、エアーハンマーを使ったらあっという間に剥がれた。

音が凄いのが難点だけれど、いつか前所有者の臭いとタバコの煙が沁み込んだ絨毯を剥がして掃除のしやすいクッションフロア仕上げにしようと思い2500円位だったので買っておいた工具が思った以上に役に立った。作業効率を考えればこのためだけに買う価値は十分にある。

飛んだリベットの頭が絨毯側に張り付いている。
いちばん外側の5本が運転席との接合リベット。
絨毯を剥がしているうちに、17年の臭いと汚れが沁み込みダニやノミが一杯居そうなこの不潔な物体がどうにも我慢できなくなり、全て剥がしてしまった。

この部分が一番力がかかりそうなので、数を2倍に増やして全てボルトナットで固定した。ナットはセルフロックナットを使用。運転席側もここは厚い鉄板が使われているので強力に固定しても大丈夫だろう。
10cm間隔程度に打ってあったリベットを倍に増やして固定。

これでカヌー を固定するロープが食い込んでも荷重が分散されるので大丈夫だろう。

断熱のために8mm厚のウレタンチップマットを両面テープで貼り付け、1畳598円の安物クッションフローリング材を更に両面テープで貼り付ける。

両面テープは建材用プチルゴム系を使用。いろんなメーカーから似たようなテープが出ているけれど、ニットー以外は使い物にならない粘着力だった。
なぜかツートンカラーなのは特売品のため同じ柄がなかったから。どうせ普段は布団を載せっぱなしなので気にしていない。
安物のほうが薄っぺらいので施工しやすい。細部は雑な仕上げだけれど、絨毯に比べれば遥かに清潔感が増し、拭き掃除もできてダニも繁殖しにくそう。

この後すぐ知床10日間 の旅に出たところ、今まではパンク付キャンピングカーの宿命とあきらめていた走行中常にミシミシと音がしていたのがほとんどなくなり、オーディオ の音量を1段下げられるくらい快適になった。
   


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