森の朝は小鳥のさえずりからはじまる。

と言いたいところだけど、さえずり、というレベルではない。大演奏会。フルオーケストラなどチンケに思えるほど生命を賭けたメロディーで、技巧とは次元の違う美しさがある。何種類いるのか判別できないけれど、野鳥たちは天性の音楽家だ。いや、天性というのは失礼か、多くのライバルたちに負けないようあらゆる音域で自己アピールを毎日鍛錬し洗練されてきたのだろう。

CD1枚分ほどの美しい演奏をまどろみながら聴き終わると、次は虫たちの静かな演奏が始まる。それに混じって池の鯉が跳ね、蛙が池に飛び込む音。野鳥があちこちでソロリサイタル。まれに演奏が途切れると沢水の流れる音が響き渡る。夏の太陽にはミンミンゼミが最高にいかす音を奏でる。

ひぐらしの音が夕暮れを告げると間もなく蛙の大合唱会の幕が開く。宵もたけなわのところで鈴虫の音が1日を締める。

アパートでは車の音しかしないのでいつもラジオか音楽をかけているけれど、ここではお気に入りのオーディオの音も雑音にしか聞こえない。たまにチェンソーか草刈り機、カラオケの音などが聞こえてくるときはやむなくスイッチを入れるくらいだ。ボリュームを最大にしても迷惑がかかる近所などないので、100W+100Wをフルドライブできる。

庭の池は最初は殺風景で邪魔だと思っていたけれど、野草が茂ってくるとなかなかいい雰囲気を出してきた。春、大量に発生していたオタマジャクシは1匹もいなくなり、無数の蛙が毎晩最高の合唱を聴かせてくれる。鯉(といっても手のひらほどの大きさ)、蛙、イモリ、ゲンゴロウ、ヤゴ、サワガニなど多種の生き物が観察できるので、住みやすいようわざと草ボウボウのままにしてある。張り出した草花から勝手に池に落ちるドジな虫たちが住人?たちのいい餌になっているようだ。毎日30分くらいは池の住人たちを眺めてしまう。

池の住人?たち。

いつもボーっとしていてたまに飛んでくる虫をジャンピングキャッチしたりしている。こいつらを眺めていると気楽そうでいいなぁ、と思うけれど、実は池の周りにはこいつらの天敵のシマヘビも見かけたので、なかなか生存競争も大変なのだろう。住人同士は鯉の上に乗っかってみたりと仲よさそうだ。
1月に競売落札し、2月に所有権移転登記完了。3月に四国に住む前所有者と連絡が取れ5万円で円満引渡(放棄兼廃棄依頼書 に署名押印してもらった)を受けた。家財道具はほとんど持ち出されていたので、4月に電気と水道(井戸)が開通していつでも住める状態になった。ここまでの費用が落札金額を含め200万円かからず順調に進んだのはとても幸運だった。


家の顔である玄関の鍵を1万円で買取ると申し出たのだけれど、ないと言われた。悔しくて競落者には渡したくないのかもしれない。

仕方ないのでまずは無施錠だった窓から入って中から鍵をあけ、以降も外出のたびに中から施錠して勝手口から出て、勝手口の戸を外から目立たないよう木ネジで固定するという情けない状態がずっと続いていた。
元々の取っ手も上質だしなんともいえない年季がいい味を出しいてとても家にマッチしていたのだけれど、無施錠というわけにもいかない。

一番安いステンレスの取っ手なら2000円程度からあるけれど、どうも味気ないし、どうせ替えるなら手に物を持った状態で肘でも開けることができるレバー式の方がいい。でもレバー式は安くても5000円以上だし味を求めると万を超えてしまう。

困ったときのヤフオク頼みで、ストーンレバーの傷物長期在庫品を2000円で落札。
ストーンの上側にうっすらとヒビが入っている傷物だけど、家自体が名実共に傷物なのでよく似合ってる?割れるほどのヒビではないし、ストーンの手触りが素晴らしく満足。

錠前の交換など初めてだけど、説明書を見ながら試行錯誤でなんとかできた。少しだけドアの穴を広げる必要があったけれど、基本的な寸法や構造が前の錠前とたまたま同じだったので難しい加工は不要でぴったり取り付けることができた。

玄関の鍵は思った以上に精神的なもので、やっと自分の家になったと腑に落ちるところがあった。
ロデオ!?

いえ、ファスターです。
キャンピングカーのロデオのベースとなったピックアップトラック。2駆ですが。

山暮らしでは造園、小屋建築、家屋の補修から薪運びまでトラックが必需品なので、最初は維持費が安い軽トラで探したけれど10年落ち10万km超えでもエアコン付きだと40万円位。どうせなら70万ちょいの新車がいいか、と手が出そうになった。

そんな時ふと近所の採石場に砂利の値段を聞いたら現地渡しなら525円/tだという。2tダンプで配達してもらうと10000円が相場、10tダンプなら割安だろうけど家は進入路が狭くてロデオサイズが限界。モータープール 計画や整備場、駐車場、物置など大量の砕石や砂、セメントが必要なので自分で数回運ぶだけでトラックの維持費くらいは浮く計算だ。ちなみにホームセンターで20kg袋入り298円の砂利は14900円/t。

しかし軽トラの最大積載量は350kg、ちょこまか往復を繰り返すのもアホらしいし積込みの手間を考えると525円/t÷3で売ってくれるとも思えない。2tトラックは普段使いには乗り心地が悪すぎるしキャブオーバー車しか選択肢がない。キャブオーバー車は腰に悪い、うるさい、夏暑い、整備性最悪なので大嫌い。キャンピングカーもほとんどがキャブオーバー車の中わざわざロデオにしているくらいなので絶対に避けたい。妥協して積載量1tクラスだと現行タウンエースが良さげ。でも現行だけに中古の最安でも軽トラの新車くらいするし荷台が高くで使い勝手悪そう。タイ製でダイハツエンジンのボアアップ版というのも不安がよぎる。最大積載量も800kgだし半端。

ピックアップトラックなら1t積めて普段使いもまずまず。しかしハイラックスやダットサンは生産終了から数年が経ち、プレミアが付いて相場高め。ディーゼルだと3桁超えも当たり前になる。
ロデオやファスターは生産終了から20年が経ち、半年に1度くらいしか出玉がない。ロデオキャンピングカーのほうが遙かに球数が多いし割安だ。しばらくアンテナを張っていたら静岡で業者オークションに出ているのを見つけ、オークション代行業者に依頼して諸費用陸送費込み42万円でゲット。

22年落ち19万km走行車で40万円は割高感が否めないけれど、実用車は値段が落ちないし選べる状況でもないのでやむを得ない。事前の現車確認やクレームの一切きかない業者オークション代行は不安だったけれど、1週間後に届いた車は外見、機関とも良好で5万km走行のロデオと比べても遜色ない。下回りの錆 は長野出身のロデオに比べたらさすが静岡出身、とても軽微だ。

ロデオのトルクもりもりで疲れないエンジンと素晴らしい低燃費、小気味よいシフトフィールに惚れ込んでいたし、交換部品のストックも共通で済む、サービスマニュアルやパーツリストもロデオを買った直後に入手済み。タイミングベルト交換 も経験済みだし、整備は全て自分で行うつもりなので経験の蓄積が生かせる。どちらかが潰れても部品取りとして使える。割高でも個人的にはメリットが大きい。

こいつで毎週通いながら少しずつ引っ越しを進め、来春までにはアパートを引き払いたい。月5万円以上の固定費が浮くのですぐにでも引っ越したいけれど、今は良くても厳しい冬を何の備えもなく山小屋で乗り切れるとも思えない。無理して体を壊したら元も湖もないので、あせらず慎重に一歩一歩登っていこう。


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