タイミングベルトは10万キロで交換だけど、18年も経っているし経歴不明の中古なのでメーター戻しの可能性もある。距離計は6万キロ弱だけどビクビクしながら乗り続けるよりはさっさと交換することにした、

自分で作業するのは初めてだけど、Web情報やいすゞから整備書のコピーを入手の上何度も脳内シミュレーションしてやれると判断。失敗したら確実にエンジン昇天なのでかなりの精神的重圧はあったけれど一つ一つの作業を焦らず確実にやれば大丈夫。
必要な特殊工具は基本的に自作。

クランクプーリーやカムプーリーの固定に必要な特大ユニバーサルホルダは3mm厚の鉄平板で自作。地面に引っかけられるよう長さは1m弱、タイミングベルト交換最大の難関、20kgfというバカ力で締まっているクランクプーリーボルトもプーリーさえしっかり固定されていればスピンナ+単管パイプ攻撃でOK。マニュアル車だからギア入れて回せばいいと思ったけれど、強靱なバネを相手にしているようでインパクトをかけることができないので全然ダメ。スピンナを固定してセル一発という手もあるけれど、ボルトをなめたりしたら取り返しがつかないので最後の手段としたい。
クランクとカムシャフトのオイルシールを圧入するための水道管用塩ビパイプ異径ソケット40*50。ひっくり返してクランクとカム両方使えて50円。しかしこれは後で落とし穴があった・・・。
タイミングベルトの張り調整に必要なバネばかり。

整備書によるとレバーに垂直下へ10kgから12kgの力を加えた状態でテンショナベアリングを固定すると書いてある。100円ショップで5kgの物が売っていたので2個並列で使用。
上からのぞき込むようにしか見えないので死角が多く鏡は必須。

クランクシャフトオイルシールの抜き取りはシャフトやケースに傷をつけないよう神経を使うので、鏡は固定できた方がいい。100均の自転車バックミラーを適当なアングルでステーを自作して固定して集中して作業できるようにした。
まず作業性UPのためラジエターを外す。

上と下のホースをとって4カ所のボルトを外すだけだけれど、下側のロゥアーホースが硬化していてびくともしない。試行錯誤の末適当な木片(ロデオ内装材のなれの果て)に40mm位のホールソーで半円を開けてホースをテコの原理でこじったら簡単に外れた。18年間ですっかり柔軟性の失われているホースは当然新品に交換する。
これがボスキャラのクランクプーリーボルト。

対角24mmのボルトだけどホイールナットの倍のトルクで締まっているし、そのままではプーリーごと廻ってしまう。

廻り留めのために、まず周辺の4本の対角12mmのボルトを取り外す。
8mmねじのスタッドボルトと高ナットを組み合わせたお手製アタッチメントをまず取り付ける。

この写真ではもうクランクプーリーボルト取れちゃってるけど。
そこに冒頭で紹介した特大ユニバーサルホルダを取り付けて地面につっかえ棒とする。

スピンナハンドルに単管パイプを突っ込んで長さ1mくらいにして必殺チョップ!
後はカバーを外してやっと会えたタイミングベルト。

簡単に書いているけど、特殊工具を製作したり試行錯誤でここまでまる1日かかっています。いやー長かった。

作業の邪魔なのでウォーターポンプもさっさと外す。ボルトナットを取り外すだけでパッキンも綺麗に剥離。タイミングベルトを外さなくても交換できるタイプだった。



まずクランクを1番圧縮上死点に合わせる。


インジェクションプーリーに上死点固定ボルトを取り付けてから、ベルトとプーリーに合いマークをマジックで書き込む。

ベルトを外してから新しいベルトに合いマークを写し取り、各プーリーとベルトのコマが狂わないようにする。これは整備書には書いていないけど、webでは皆やっている。原理的には各プーリーの位置が合っていれば同じようにベルトを掛けられるはずだけど、上死点固定ボルトで固定してもプーリーには結構遊びがあるし、ベルトのたるみ具合で一コマくらい簡単にずれてしまう。

黒しかなかったけど見づらいので白の方がいいけれど、普通白いマジックなんて持ってない。
カムプーリーも同じく上死点固定ボルト(金色の8mm×50mm)を取り付けてからマジックで書き込む。
上死点マークに合っていることを再度確認して、クランクギアにも忘れずにマーキング。
新旧ベルト比較。

目立った傷や亀裂はなく、まだまだ使えそう・・・。やっぱり6万キロで交換はちょっともったいなかったかも。

マジックで正確にマーク位置を写し取る。

クランクギアは圧入されているタイプもあるらしいけれど、この車はただはまっているだけで引っ張ればすっと取れる。

クランクオイルシールはなんか漏っている気がする。シール全体にオイルが滲んでいるというか腐っているような感じ。
エンジン前下部がいつも滲んでいたのはやはりクランクからのオイル漏れか?もうちょっと上の方から来てる気もするけど・・・。

まあ垂れるほどではないので許容範囲内だけれど、せっかくだから交換したほうが良さそう。
シールを外す専用工具もあるようだけれど、オイルシールにキリで穴をあけてから手持ちのフックドライバで外した。しかし手で引っ張った程度ではびくともせず、急激に力を加えるとオイルシールが破れる。じわじわと強い力をかけるためにタガネをテコにしてゆっくり引っ張ったら簡単に抜けた。試行錯誤に2時間ほどかかったので、素直に2000円のシールドライバ買った方が良かった。
このように引っかけて外したのだけれど、シャフトやケースに傷を付けるとオイル漏れ必至なので集中して作業したためかなり疲れた。抜けたときはヤッター、でした。
外径がぴったりの塩ビパイプソケットをクランクプーリーボルトの間に挟み締め込めば楽勝、と思ったのだけど・・・

クランクが廻ってしまわないように、念のためギアを入れておいた。
しまった・・・。

外径だけでなく内径もぴったりでないと、リップがめくれてしまうとは。

2時間も掛かって外したオイルシールまた外すのかよオイ。

さすがにコツを掴んだのですぐに外れたけれど、750円のオイルシールが無駄になってしまった・・・。

しかたなくまたホームセンターで内径がぴったりの塩ビパイプを探してきてカット。オイルシールは再度MonotaROに発注。続きはまた1週間後だ。
改良した塩ビパイプオイルシールドライバで今度は綺麗に収まった。

オイルシール交換に丸1日も掛かるとは・・・。
お次はカムシャフトのオイルシールを交換。

カムプーリーボルトを外すためお手製ユニバーサルホルダでプーリーを固定。

上死点固定ボルトでも固定しているとはいえ、緩める力を加えた時ホルダが外れてプーリーが廻ってしまうとバルブがお釈迦になるので慎重に。ベルトを外す前に緩めておくべきだった。
プーリー受けの部品。これはセンターボルトを外せば手で軽く引き抜ける。





 
そして感動?のカムシャフトオイルシールとご対面。

しかしちょっと意外な取り付き方。ケースに直接ではなくわざわざホルダを介在しているということは、厳密な圧入精度を要求しているということ。クランクオイルシールと同じ手法で交換しようと思っていたけれど、素直にホルダごと取り外しプレスで圧入することにした。
ホルダからオイルシールを取り外す前に、圧入されている位置を撮影しておく。
クランクシールで使ったソケットを逆にして、プレスで正確に圧入した。

今度は外径さえ合っていれば当然OK。

ホルダとケースのシールには内径50mmのOリングが使われているけれど想定してなかったのでこれもMonotaROに追加発注してまた1週間待ち。しかし太さ2.5mmというのが汎用ではラインナップになくて3mmを使用、ちょっときつかったけれど再利用するよりマシでしょう。
新しいウォーターポンプにはスタッドボルトが付いていないのでお古からダブルナットを掛けて移し替える。地味にめんどくさい。

8カ所ねじ穴が開いているがボルトは4つ。考えずに取り付けたら実は2種類の間隔があったようで微妙にファンが入らない。確率1/2だが見事に外してやり直しました。

ついでだからサーモスタッドも交換。

ガスケットの剥がれ残しをスクレーパーで綺麗に取り除くのがまた面倒。

しかしこういうところで手を抜くと後日水漏れしてしまう。
新しいベルトを古いベルトから写し取ったマーキングと各プーリーのマーキングに合わせて取り付けてから張りをテンショナーレバーで調整する。

レバー垂直下方向に10kgの力で引っ張りながらテンショナーベアリング固定ボルトを締めるのだけれど、実際やってみると体制が取りにくく難しいのでコンクリートの重りにバネばかりを取付けちょうど10kgになるようにジャッキで調整してから固定ボルトを締めた。

上死点位置で行った後左45度にクランクを逆回転させてもう一度繰り返すとのこと。
詳しくはこちら

web情報ではさらに2回転クランク廻してベルトがなじんだところでもう一度繰り返すという記述もあるけど、今回は整備書どおりに実施。テンショナーベアリングとアイドラプーリーも新品に交換したけれど、古いベアリングも十分スムーズだった。
カバーを取付け、クランクプーリボルトを19kgfで締め込む。

目盛一杯まで使ったのは今回が初めて。しかも締めるときに単管パイプを使うとは。


ここまでできたら手でクランクを廻して変な引っかかりなどないことを確認したうえで、緊張のエンジン始動。無宗教だけどキーを捻るときはさすがに祈った。


補機類に新しいベルトを掛け、張り調整。

パワステ&エアコンベルト(2本がけの長い方)は簡単だけど、ファンベルトは結構大変。切れたらやばいファンベルトの方を簡単に交換できるようにしてほしいけれど、現場で交換は予備ベルトがあってもちょっと難しいかもしれない。
ファンベルトの張り調整はオルタネーターを動かすけれど、固定ボルトはバッテリーを外さないとアプローチできない。

コンプレッサーとの間にタイヤレバーなどの長くて丈夫な平板を当て上に引くとテコの原理でオルタネーターが外側にずれてファンベルトにテンションが掛かる。テンションを正確に調整するためボンネットにタイダウンラチェットを固定して平板の端を斜め上に引くようにするといい。

ラジエターとファンを取付け、冷却水を入れて終了。

作業時間は5日ほどかかったけれど、これでエンジン周りはあと10年10万キロは大丈夫なので満足。プロなら1日の作業内容だけど、全て初めての作業で試行錯誤し工具作りながらではこんなものか。逆に言えばアマでも時間さえかければ必ずできる!


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