昨年夏の初運行前にクラッチフルードは交換したのだが、1時間走行しただけですぐにフルードが真っ黒になってしまう。

もう1回交換したがまたすぐ真っ黒に。フルードが古くなって劣化すると茶色(コーヒー色)になるのだが、オイルのような黒さ。粘度はなくサラサラしているのでマスターシリンダー内部のピストンカップのゴムが経年劣化でボロボロになっていてフルードに粉状に混入していると予想しオーバーホールすることにした。
まずはクラッチペダルを室内側から取り外す。

ねじ4本で止まっているだけだが、レンチを入れる隙間がほとんどなく、ソケットエクステンションを複雑に組み合わせて外すのに2時間もかかってしまった。
マスターシリンダのプッシュロッドが室内に出ている。フルードが漏れているとここから垂れてくるはずだが、そのような形跡はなかった。4隅の白いネジをボンネット側から回せれば簡単に外せるのだが溶接されている。いすゞさん整備性を考えてよ。
マスターシリンダを取り外したところ。パイピングのフレアナットは12mmのフレアナットレンチを使用しましょう。
ばらしてみたら大問題発生!

あらかじめ購入してあった純正品(写真上)と形状が違う。直径は同じだが長さも5mm程短い。
いすゞディーラーで確認すると、マスターシリンダASSY(写真の全てを含んだもの)が代替品になっておりオリジナルのリペアキット(写真中)は廃番で出ないそうだ。リペアキットは2千円弱なのにASSYは2万6千円もするとのこと。社外品も当たったが全て代替品になっていた。

仕方ないので2つのゴムカップのみを入替え、ピストンは再使用することにした。リップ部に触らないように内側をマイナスドライバーでこじると簡単に外れた。挿入するときは本当はインサートツールが必要だが円錐形ならなんでもいいので100円ショップのケーキコーナーで生クリームのチューブの先につけるアタッチメント(左上)を買ってきてグラインダで成形して使用。しかし作業着の中年がケーキコーナーでうろうろしているのは恥ずかしかった。
マスターシリンダ内部はまったくもって綺麗な状態。

ピストンのゴムも外した後どっちが新品なのかわからないくらいで、17年の劣化は外見からはわからないが少なくとも減ってはいなかった。

走行3万キロはメーター戻しでないことがほぼ確信できた。
それではスレーブシリンダが怪しい。

車体下に潜りミッションの左横についているクラッチスレーブシリンダを左上のフレアナットからクラッチホースごと取り外す。
スレーブシリンダ内、見事に段付錆びを発生している。

この車は私の購入前少なくとも6年くらい全く動かしてなかったようなので、ピストンが一番奥にある状態のままで床下の湿気がフルードに浸かっていない部分を錆び付かせてしまったのだろう。たまにでも動かしていればこういう状態にはならなかっただろうけれど。

ブレーキフルードに浸した耐水ペーパー#600で錆びを落とし、#1000で仕上げ。フルード漏れの恐れがあるので縦方向ではなく円周方向にこする。



ピンボケ申し訳ないがピストンもやはりフルードに浸っていない下側が錆びていた(左)。

フルードがすぐ黒くなったのはスレーブシリンダ内の錆びが原因と推定される。

クラッチの油圧システムはブレーキとほぼ同じなのでエア抜きのコツさえ掴めば難しいことはありません。数年ごとにメンテナンスをすることをお勧めします。ブレーキのOHはshu-sideさんのHP に詳しく載っています。やっぱりピストン& シリンダが錆び錆びですね。フルードが漏れなければ動作はしますがピストンの動きが悪くなりペダルの感触がぼやけたり、戻り不良でディスクを痛めたりします。クラッチはブレーキよりストロークが長いし動作回数も多いのでフルード&カップの劣化も早めです。
カップにラバーグリスをたっぷりつけて生クリームアタッチメントのお手製インサートツールでピストンに挿入。

ついでにクラッチホースも新品に交換して元通り組み付け、ブレーキフルードを充填。

ちょっと運転したところ、クラッチのフィーリングが格段に良くなった。前はどこでクラッチが繋がっているのかよく解らなくて、少しクラッチディスクがスリップしながら繋がっているような感覚があったが、今度はクラッチディスクのミートタイミングが足裏でハッキリ感じられるようになった。クラッチを切るときは強力な油圧でピストンが押されるので錆びも関係ないが、ピストンが戻るときはリターンスプリングの力だけなので錆びに引っかかりながら戻っていたのだろう。このまま使用していたらクラッチディスクがすぐに傷んでしまう。MT車は10年ぶりなのでこんなもんだっけと思っていたが、クラッチ操作が楽しくなった。
   


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