いきなりですが、トライアルバイクは2輪車の、いや、乗り物全ての基本です。これほど車体の挙動がはっきりわかる乗り物はありません。同じ動きをXRやモトクロッサーでやろうとしたら体がいくつあっても足りません。
しかし、若者はスピードと外見に惹かれ、たいていレーサーレプリカなどに乗ってしまいます。そういう私も書き出しのことに気が付いたのは30歳を過ぎてからでした。スピードは細かなテクニックの集大成の結果なのですが、なかなか気が付かない。エンジンパワーと根性だけでは体と心を壊すだけです。
いまさらですが、中古のスコルパSY250初期型00年式を入手したので全バラ整備をはじめてしまいました。河原で3回ほど乗ったのですが、いまいち乗り方がわからず、ついつい長年のモトクロス乗りをしてしまいます。このままでは真の性能を引き出す前にバイクを壊すだけと思い、整備と車体構造の理解を兼ねて取り掛かることにしました。
スコルパはおフランス製ですが、エンジンだけはお山派製です。90年代のTYスコティッシュと全く同じで、パーツもヤマハから入手可能なのが魅力。純国産トライアラーは現在なく、HRCホンダのRTL250が唯一国産に近いのでどちらにするか迷いました。レーサー、特に中古はパーツの入手や価格が一番の問題だからです。純正ビックタンクをつけてツートラもできそうだというのがスコルパにした理由です。
しかし1回乗って間違いに気づきました。こんな落ち着きのない軽量な車体でツーリングなどする気にならないです。また、トレール車と別次元の走破性は、山奥で遊ぶのにかえって危険です。私の性格上とことん行けるとこまで進まないと気がすまないので、本気で遭難しかねません。やはりこいつはコースでの乗り物です。だったらRTLにしときゃよかった・・・。
こいつのエンジンは15年くらい前に散々弄繰り回したDT125R(3FW)とそっくりです。同時期同メーカの設計だから当たり前か。組み立ての癖がわかっているので作業はスムーズに進みます。ただし、エンジンのマウント方法がトレールやモトクロッサーとぜんぜん違うので苦戦しました。アンダーパイプはないし、シリンダーヘッドがフレームに直付けされているので最初どうやってシリンダを外すのかわかりませんでした。
シリンダを外すという考え方が間違っていた。フレームを外すんですね、こいつは。

こうやって見ると、当たり前ジャン、と思うかもしれないが、ばらして見ないとなかなか気が付かない。
ピストンにはそれなりにカーボンが堆積、ピストンリングも減っていそう。
ピストンピンのサークリップを外すときは、クランク室内に落とさないよう気をつけよう。ペーパータオルとウェスをこれでもか、と突っ込む。
もっともエンジン下ろさないとピストン交換できないトライアル車の場合、エンジン逆さにすれば落ちてくるけど。トレールやモトクロ車はエンジン下ろさずにピストン交換するのが普通だから、落としたらエンジン下ろさにゃならない。運がよければエアを吹き付ければ出てくるかも。
カシータがパーツ置き場になってしまった。早く片付けてカシータもいじってあげないと。
ピストンを外したところ。ピストンリングやガスケット等はウェビック通販でヤマハから取り寄せたTYの純正部品を使用。昔は純正部品を買うために2回もバイク屋に足を運ばなければならなかったのに、今は1万円以上送料無料で送ってくれる便利な世の中。もっともそうやってバイク屋と仲良くなっていろいろ教えてもらえた面もあるけど。
ピストンはキャブクリーナ漬けにしたあと、紙やすり→コンパウンドでピカピカに仕上げてから新品リングとガスケットを組み込む。
シリンダはまったく問題なし。DT125Rはボーリングして0.25mmオーバーサイズピストンを組んだものだが、90年代以降はなんとかコーティングしてあるのでボーリングしちゃダメ。もっともオーバーサイズピストンがないけど。

ピストン組み付けの際は2ストオイルを塗布してから(ガスケット面にはつけない)。手がオイルまみれでちょっと泣きが入る。組みつけの前にエンジンを隅々までパーツクリーナで磨き上げておかないと作業中オイルに汚れが混入することに。

シリンダを取り付けたところ。クランキングして位置決めしながらボルトを対角に数回に分けてトルクレンチで締め付ける。

シリンダヘッドも取り付け。トルクレンチで対角に規定トルクで締め付け。
17年前バイト代はたいて買った東日のトルクレンチ。3万円近くしたような。今はホームセンターでも数千円でトルクレンチが手に入るけど、当時はこれしかなかった。980円のレンチセットを使っていた学生時代としては破格の買い物。今でも一番高価な手持ち工具です。右から2番目のアタッチメントがないとシリンダ下部の取り付けボルトを締められない。
フレームを取り付け。こうしてみるとモトクロッサーやトレールとは全く構造が異なることがわかる。同じ乗り方しちゃだめでしょう。
せっかくだからステアリングステム周辺もメンテ。オールアルミ製で恐ろしく軽い。ただし肉厚も薄く、モトクロッサーのようにフロントローでジャンプしたら折れそう。
ベアリング、レースともに状態は良好。清掃してグリスアップ。
リアサス取り付け部がほとんどエンジンの中央真上にある。
前足(前フレーム)の間にラジエターが包み込まれるように収まる。無駄の全くない設計だけにばらすのはともかく取り付けは難しい。
スイングアーム取り付け部。製造時のグリスがきれいな状態で残っていた。オイルシールからの浸水はない模様。
念のため清掃して再度グリスアップ。
ここまでくれば完成は目前。エキパイといいリヤサスといい、ほんとに取り回しに余裕がない。マス集中の究極の形をしている。その分取り付けは知恵の輪のよう。


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