キャンピングカーは狭い空間の中に家屋に近い機能を詰め込むため、多数の電気電子機器が搭載されている。電力は車のオルタネータと外部100Vをカーバッテリーとは別に搭載するサブバッテリーに充電して供給する。
 太陽光発電システムがもう少し普及すれば、ソーラーパネルから曇りでも充電できたり、リチウムイオン電池に急速充電することも可能になるだろうけれど、現在の技術水準では急速充電に不向きな鉛蓄電池に走行充電が主体となるため、特に滞在型の旅では電力供給が不足しがちになる。サブバッテリーが空になると明かりも水もガスも使えなくなり、只の箱と化したキャンピングカーはあらかじめ不便を想定したテントよりも惨めなもの。
 
 キャンピングカーのかよわい心臓ともいえる電気を総合管理制御する専用品は市場に存在せず、汎用の単機能市販品を個別に流用しているため制御機器が多数必要となり購入費用が嵩み電力ロスが多く管理も大変で、スイッチを切り忘れたりするとバッテリー上がりに直結する。鉛蓄電池は過放電に弱く、一時的にでも空にすれば寿命を縮め、空のまま数日放置すれば使用不可となる。ユーザーは常にサブバッテリーの残容量を心配しなければならないけれど、残容量の正確な把握も困難なため、電気トラブルにより旅行計画の変更を余儀なくされることもある。
 少ない電力を最大限生かすために、放電量と充電量をモニターするとともに累計から残容量を高精度に推計、運転中でもタッチパネルで簡単に機器のON/OFFが可能で、過充電なく最短時間で充電するよう最適化できる充電プログラムを備えた総合管理制御機器があれば、ユーザーは自宅に近い快適空間で旅に集中することができる。

 技術的には数個のFET(半導体スイッチ) 、コイルとコンデンサによるDC昇降圧回路をUSB又はBluetooth通信対応ワンチップマイコン で制御し、スマートフォン、タブレット端末や車載PC からモニター及び各種設定することで操作パネルが不要となりコストと車内空間を節約できる。外部AC100V入力からDCへの1次降圧は既存の定電圧装置(AC-DCコンバータ)を生かし、マイコン制御により2次降圧又は昇圧することで最適化充電とコスト低減を図る。 

 この制御装置は数世代前の技術で開発でき、材料費も小売で数百円程度だけれど、キャンピングカーの販売台数は年間4,000台程度で車中泊仕様ワンボックス車等を含めても一万台程度、その1割が購入する大ヒット商品となったとしても@5,000円×1,000台=5百万円の利益にしかならず、企業に商品化は期待できない。誰も作ってくれないならDIYしかない。ついでに少し売れたら旅の費用くらいにはなるかも知れない。これを見て誰かが作ってくれたら買う。開発労力を考えると割に合わないけれど、ロデオの快適化と高価なディープサイクルバッテリーを長持ちさせること、なによりモノづくりの幅を広げる楽しみのために、しばらく全ての休日と余暇を返上して取り組みたい。

機能キノウ 特徴トクチョウ 仕様シヨウ 技術ギジュツ 課題カダイ 拡張カクチョウ
走行ソウコウ充電ジュウデン エンジンONのみ通電ツウデン、エンジンOFFメインバッテリーとサブバッテリーをアイソレート(遮断シャダン メインバッテリーの電圧デンアツ監視カンシし、オルタネーター始動シドウによる電圧デンアツ変動ヘンドウによりONーOFF、しきい電圧デンアツはユーザー設定セッテイ可能カノウ ADC、FET    
メイン-サブカン配線ハイセンチョウによる電圧デンアツ降下コウカ補償ホショウねディープサイクルバッテリーの終止シュウシ電圧デンアツ(14-15V)に昇圧ショウアツ サブバッテリー終止シュウシ電圧デンアツ充電ジュウデン電流デンリュウ充電ジュウデンリョウ充電ジュウデンパターン、配線ハイセンチョウ補償ホショウ(トレーラーにおいて顕著ケンチョ)ユーザー設定セッテイ可能カノウ ADC、BOOST、シャント抵抗テイコウ   2サブ対応タイオウ
充電ジュウデン高圧コウアツ(max15V)を負荷フカハナ   FET    負荷フカ12V安定化アンテイカ供給キョウキュウ
ソーラー充電ジュウデン テン降圧コウアツクモテン昇圧ショウアツによる最大サイダイ電力デンリョク追尾ツイビギャク電流デンリュウ防止ボウシ サブバッテリー終止シュウシ電圧デンアツユーザー設定セッテイ可能カノウ MPPT、BUCK、BOOST、ショットキーバリアD   2パネル対応タイオウ
メインバッテリーにも充電ジュウデン可能カノウ メイン-サブ優先ユウセン割合ワリアイユーザー設定セッテイ可能カノウ、メイン終止シュウシ電圧デンアツユーザー設定セッテイ可能カノウ ADC、FET   地磁気チジキセンサーとステッピングモーターによる太陽タイヨウ位置イチ追尾ツイビシステム
外部ガイブ100V充電ジュウデン 汎用ハンヨウAC/DCコンバータにより1降圧コウアツ、DC/DCコンバータで2アツ サブバッテリー終止シュウシ電圧デンアツ充電ジュウデン電流デンリュウ充電ジュウデンリョウ充電ジュウデンパターンユーザー設定セッテイ可能カノウ ADC、BUCK、BOOST 降圧コウアツマイコン制御セイギョ出力シュツリョクふらつき 急速キュウソク充電ジュウデン(30A)対応タイオウ
メインバッテリーにも充電ジュウデン可能カノウ メイン-サブ優先ユウセン割合ワリアイユーザー設定セッテイ可能カノウ、メイン終止シュウシ電圧デンアツユーザー設定セッテイ可能カノウ    
充電ジュウデン高圧コウアツ(max15V)を負荷フカハナし、別途ベット12V安定化アンテイカ電源デンゲンから供給キョウキュウ   FET    
安価アンカ入手ニュウシュセイ信頼シンライセイタカいパソコンヨウATX電源デンゲンを1降圧コウアツとして使用シヨウ マン充電ジュウデンかつ負荷フカ一定イッテイ以下イカ(ユーザー設定セッテイ可能カノウ)で自動ジドウシャットダウン、バッテリー電圧デンアツ低下テイカ自動ジドウ起動キドウ充電ジュウデン開始カイシ DC5V→15V(max)へBOOST30A 30A大電流ダイデンリュウ対応タイオウコイルマタはMHzスイッチング FET並列ヘイレツ位相イソウシフト回路カイロ
Xbox360(ゲーム機)のACアダプタは12V15A(200W)一般家電用として他に類を見ない電流が取れるので1次降圧として使用 12V、5VSB、POWERGOOD端子のみなのでATX電源より電力効率がよい 純正新品の単品販売はない 国内100万台、中古やハードオフにジャンク豊富、中華電源よりまし?
充放電ジュウデンモニター 電圧デンアツ電流デンリュウ電力デンリョク表示ヒョウジオヨびロギング スマートフォン、タブレット、車載シャサイPCとUSB接続セツゾクマタはBluetooth無線ムセン接続セツゾク USB-HID framework、USB on the go(USB-host)、ADC マイコンにロギングはflashROM容量ヨウリョウ不足フソク 外部ガイブ大容量ダイヨウリョウEEPROMにより単独タンドクロギング可能カノウ
充放電ジュウホウデンリョウからザン容量ヨウリョウオヨ充電ジュウデン終了、放電可能予測時間推計スイケイ 端末タンマツ継続ケイゾク接続セツゾクのみ マイコンでは演算エンザン能力ノウリョク不足フソク 32ビットMIPSチップにより単独タンドク演算エンザン可能カノウ
過去カコジュウ放電ホウデン曲線キョクセン記憶キオク、バッテリーの劣化レッカ状況ジョウキョウ把握ハアクオヨ性能セイノウ比較ヒカク 端末タンマツ継続ケイゾク接続セツゾクのみ    
車載シャサイ機器キキリモート 使用シヨウ電力デンリョク、温度表示ヒョウジオヨ電源デンゲンON/OFF アラームオヨびタイマー FET、ADC 安価アンカなFETでは10Aが限界ゲンカイ FET並列ヘイレツ位相イソウシフト回路カイロ
冷蔵庫レイゾウコ温水オンスイボイラー(ヒートエクスチェンジャー)、FFヒーター、ベンチレーターの温度オンド制御セイギョ   FET、ADC 配線ハイセン複雑フクザツ個別コベツ制御セイギョ充分ジュウブン 各機器カクキキにBluetooth対応タイオウマイコンを取付トリツケ無線ムセンPANで管理カンリ

 核となるのは入力が5Vから20V、出力が12Vから15Vの昇降圧DC/DCコンバータで、容量100Ahの標準的なディープサイクルバッテリーに適した充電電流は10Aなので150Wクラスになる。

 DC/DCコンバータにはいくつかの手法があって、効率、部品コスト、安全性でそれぞれ一長一短がある。まずトランスによる絶縁型とトランスを使わない非絶縁型に大きく分けられる。
 いくら精密な保護回路やアルゴリズムを使用しても、ノイズによる誤動作、サージ電流、水濡れや車内の高温などに起因する電力半導体(FET、ダイオード等)破壊の可能性を0にはできず、入力と出力が意図せず導通状態になった場合、特に降圧幅が大きい場合は出力に繋がる負荷装置に深刻なダメージを与える。トランスは磁界変動により電力を伝達するため、制御装置が破壊されても絶縁は保たれるが、効率と部品コストでは不利になる。例えば100Vから12Vへ降圧する場合はトランスによる絶縁が必須となるが、今回は例え入力と出力が導通しても電位差は数Vなので、安全性を極端に損なうことにはならないと考え非絶縁型を採用する。
  非絶縁型コンバータにはリニアレギュレター、チャージポンプ、スイッチングレギュレターがあるけれど、リニアレギュレターは降圧しかできず、チャージポンプは150Wもの電力は扱えないためスイッチングレギュレターに決定、さらにCuk、SEPIC、フライバックの手法がある。Cukはコスト安で安全性も高いけれど入出力極性が反転し効率が悪いため、SEPICとフライバックに絞って検討する。
  SEPICは入出力がコンデンサで直流的に絶縁されることが最大の魅力で、入力側のリップルが少なく特にソーラーパネルの保護に適した回路とされる。反面コイルを2つ使うため効率は80%程度、20%の損失は30W程度の発熱になるので冷却FANが必須となり、熱暴走の危険は高くなる。フライバックは同期整流とすることで高効率が狙え、専用ICでは98.5%の効率を達成している例もある。数Wの発熱なら冷却FAN不要で信頼性が高い。FETが導通状態で破損するとバッテリーからソーラーパネルへの逆電流により高価なパネルを全損する恐れがあるが、ハイサイドにFETが2つ入っているので保護回路の応答性が良ければ同時破壊の可能性は低い。コストはコイル1個対FET2個+FETドライバICでほぼ等価。リップルは大きめだが周波数を上げることで改善できる。
 甲乙付け難いところだけれど、キャンピングカー内で使用する場合静粛性は絶対条件なので、冷却FAN不要のフライバックを採用する。

  さて、最も簡単な構成ならPIC18F14K50 、コイル、FET×2、ダイオード×2、INとOUTのコンデンサで500円のUSBモニターロギング機能付充電コントローラーができる。しかし効率は80%程度で変動応答性も悪く、水ポンプなどの誘導性負荷をOFFしたときの逆起電力が入力側に瞬間的ではあるが逆流しソーラーパネルを痛める恐れがある。効率を上げるにはダイオードをFETに代替して同期整流とし、ハイサイドにON抵抗の低いNchFETを使用するためにブートストラップドライバ回路を組む必要があるが部品点数が多くなるので現実的にはFETドライバICを2組加えると+500円で効率は90%超になる。変動応答性を上げるにはPIC18Fでは実行速度に限界がある。PWMを100kHzで動かすとコンパレーター割込みは16サイクル毎が限界でUSB通信の優先割込に重なるとさらに割込遅延が発生するので、数百μ秒は大電流が流れても反応しないため単体では短絡保護が成立しない。
 電力変換専用のdsPIC-GSなら1サイクル毎の制御が可能だがUSB付きdsPICはなくさらに+500円になり実装が増える。 マイコンは機能が多くいろいろなことができるけれど、単機能の性能は専用ICが勝ることが多い。パソコンと家電の関係と一緒で、パソコンでテレビも録画も電話もカーナビもできるけれど、専用製品のほうが性能が良く、パソコンのようにフリーズすることはほとんどない。画面が止まってしまうだけなら笑って許せるけれど、電源制御が止まれば150Wの電力は発火に充分で就寝中のキャンピングカー内では命にかかわる。

 ところでここ数年のLED照明の普及は目覚ましく各社から普及価格になった制御用ICが多数リリースされている。負荷としてのLEDと鉛蓄電池は定電圧定電流源を必要とする点で似たところがありその制御ICは流用できる。さらに調光機能を持つICもあり、調光=充電電流制御に置き替えることができる。その中でもリニアテクノロジ社のLT3791 は98.5%の効率で、各種保護回路を備えたうえで1.5%、わずか3Wの熱損失しか発生しないなんて個人の努力では到達しがたい領域で、それが500円で手に入るならわざわざFETドライバ回路や保護回路を組んでPWMをプログラミングしてもコストと手間を考えたらメリットはない。さらにマイコンとのインターフェイスも考慮されていて電流モニタピンの出力電圧もマイコンのADCに最適化されているし、調光用のCTRLピンとマイコンの可変Vref出力等を繋いで出力制御できる。昇降圧のモード切替やFETのPWMドライブや過電圧過電流短絡保護は任せて、PICが担当するのはUSB通信、電圧電流の設定とモニターと記録、入力源切替、ソーラーのMPPT制御のみなのでプログラム難易度は低く実行速度も要求されない。
 
 結論としてPIC18F14K50LT3791 、コイル、FET×4、INとOUTのコンデンサを基本構成とし、入力側のFET-aを走行充電用、外部AC100VからのATX電源用、ソーラーパネル用の3つ用意し小信号FETでドライブ切替する。1000円の部品代で高効率、安全で自由なUSBデバイスを構築できる。

 LT3791 はTSSOP(0.5mmピッチ)38ピンICなのでさすがにユニバーサル基板で試作というわけにもいかない。数年前からFusionPCBなどの中華格安基板製作サービスが送料込で10枚1000円程度で利用できるようなので、eargleで試作基板の設計に取り掛かる。

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