キャンピングカーとは直接関係ありませんが、自宅の2LDKを自作で全面床暖房にした記録です。

業者に施工を依頼すると百万円オーバーですが、温水を通すパイプを床下に通すだけなので、根性さえあれば誰でもできます、というか根性が付きます。現在のキャンピングカー改造にこの根性と技術と床暖房(冬季作業が多いため。夏は遊んでいます)が生かされています。
自宅は1階の2LDKのアパートです。床面積は53㎡、約16坪です。

新築時施工でなく床暖房を後付けする場合、既存床の上から温水パイプがあらかじめ組み込まれているパネルを設置するのが一般的ですが、賃貸住宅なので勝手にそんなことをするのはNGです。それに既製品のパネルは6畳分で10万円以上しますのでパネル代だけで50万円は予算オーバーです。さらにパネルの上に床暖房対応フローリングを貼らなければならないので余計に20万円程掛ってしまいます。既存床は玄関から各部屋、台所、トイレに至るまで1mmの段差もないバリヤフリーですし玄関やトイレなどは形状が複雑なので、これだけ広くて複雑な形状に連続してパネルを隙間なく敷くのはかなりの技術力が必要でちょっと自信がありません。敷設作業中は家具を移動させなくてはならないので面倒だし、作業期間中の生活が不便になります。床の高さが変わるので各部屋のドアの下部を数㎝カットしなければなりません。
施工前の床下に潜ってみます。

3cm厚の発砲スチロールが断熱材としてくぎ打ちされていましたが、くぎは軽くペンチで引っ張ると抜け簡単に断熱材を外すことができ、コンパネが出てきます。床の構造を調べると12mm厚のコンパネが2枚張られ、その上に3mm程度のビニールフローリングで仕上げられています。

床表面まで27mmの厚さがあるのは床表面にパネルを張るのに比べると熱効率面で不利ですが、前述の理由により床下から施工することに決めました。逆にこの厚みのおかげで床表面の温度が上がりすぎないので、床暖房対応フローリング材を使用しなくてもビニールフローリングの既存床で問題ありません。鉄板の厚いフライパンのほうがおいしい料理ができるのと同じで、蓄熱層が厚いので自然な暖房感が得られます。暖房の立ち上がりは遅いですが、30分前にタイマー制御しておけば部屋全体が暖まっています。
温水パイプはポリエチレン管が一般的で安価ですが、放熱効率は銅管の方が圧倒的に優れています。前述のとおり熱効率面での不安があったため銅管を採用。水道用銅管は高価なので空調(エアコン)用の銅管を使用しました。空調用は水質により腐食することがあるらしいです。10mm径20m巻で6000円程度、220m程使用したので66000円也。ポリエチレン管なら40000円程度でしょう。

銅管の熱を均一に拡散させるため0.4mm厚のアルミ板を小根太の間隔(自宅は21cmでしたが一般的には26cm)に切断したものにアルミテープで銅管を固定していきます。部屋の横幅は2.5mありますが、2.5m長では床下点検口から床下に入れられないため、最長1.5mずつパネル状にして床下に搬入してから銅管継手でパネル同士を接続することにします。

0.4mm厚アルミ板は1畳サイズで2200円程度、24枚使用で52800円也。放熱効率は銅板が一番ですが、お値段がアルミ板の3倍以上しますので、一般的な金属のなかでは次に放熱効率の良いアルミを採用しました。軽くて軟らかいので施工も楽です。カッターやハサミで簡単に切断できます。
アルミテープは25m巻で980円程、250m使用で9800円也。

アルミの鈍い光沢となまし銅管の艶めいた輝きが美しく、金属フェチ?の心をくすぐります。機能美に満ちた素材と向き合って真剣に作業していると無心になり、平日の仕事で溜まったストレスが解消されていきます。

パネル同士の接続は銅管継手を使用します。

1個180円で200個程使用したので36000円也。
少しでも放熱効率を上げるよう隙間なくアルミテープを貼っていきます。

アルミテープはかなり粘着力がありますが、温水を通せば高温で糊が剥がれることも予想されるので、アルミ小板でパイプ押えを作りその上から床下のコンパネにネジで止めることにしました。
小根太に穴を開けて通せば熱効率的に無駄がないのですが、床の強度が落ちるし賃貸住宅なのでばれることは無いにしても気が引けます。
小根太をまたぐ配管を作るのは結構面倒です。銅管を3cmと4cm*2に切断したものをエルボでロウ付けして繋ぎます。50個作成しエルボ代は40円*4*50=8000円也。ポリエチレン管を使用するとエルボなんて無いので継手を使うしかなく逆に高くつくことも銅管を採用した理由です。

ロウ付けはバーナーとソルダー(鉛なし半田)とフラックスがあれば誰でもできます。エルボをバーナーで熱しソルダーが溶ける温度になったらソルダーを接合面に当てると液状になったソルダーが隙間を埋めるように拡がっていきます。ソルダーを当てるのが早すぎるとうまく拡がらず、遅すぎるとフラックスが燃え尽きてソルダーが接着しません。最初は失敗しますが銅の色が熱で変化する具合でタイミングが解るようになります。バーナーの火力で違いますが炎に当てるのは20秒前後です。リズムに乗るとなかなか楽しい作業ですが1個作るのに10分は切れませんでした。
50cm長に切ったアルミ板に銅管位置をけがきます。
10mm径なまし銅管をけがき線に合わせて切断していきます。
 
なまし銅管は手で簡単に曲げることができるので位置合わせは楽です。多少寸法が狂っていても誤魔化せるのでDIY向きです。
作り置きしてあった小根太またぎ配管をロウ付けしていきます。
ロウ付けが終わった所で水圧をかけて漏れがないかテストします。このパネルは50個作りましたが2,3枚漏れがありました。漏れた部分にバーナーの炎をあてて再度ロウ付けをやり直したら漏れは全て止まりました。床下に組み付けてから漏れたら最悪なので慎重に3分ほどチェックします。実際は上水道程の水圧がかかることはありませんが。
漏水テストに合格したらアルミテープを全て貼り銅管継手をねじ込みます。
床下点検口は60cm*60cmしかないので狭い床下に持ち込むにはこのサイズが限界です。

1枚製作するのに平均1時間を要しました。
直線部分のパネルを製作するのには1枚あたり30分要しました。これも50枚作成、ただし玄関や廊下の部分は長さがまちまちです。最大で1.5m。細長いので床下点検口からギリギリ入りました。
上の2種類の標準パネルの他に、部屋の間をつなぐパネルなど例外的形状のパネルも現物あわせで作成しました。床下で慎重に寸法を採らないといざ床下作業を開始してから接続が合わない場合その日の作業は打ち切りになってしまうので面倒です。リズム良く作ることができないのでこの1枚にたっぷり半日かかっています。
全ての部屋に常時温水を流すのは灯油がもったいないので各部屋の通水をコントロールできるよう電磁弁付きパネルも製作しました。

通常は電磁弁は熱源器側に施工します。電磁弁が壊れたとき修理のため床下に潜るのは大変だし図面が無ければどこにあるかわからないからですが、熱源器から各部屋まで個別に温水配管を取り回さなければならず配管代も馬鹿にならないし長距離の配管からの熱損失(灯油代)も大きくなります。

自作の施工者=使用者の強みで、電磁弁が故障したときは床に潜る覚悟で最短距離の配管として重複する配管を無くしたので、熱損失は最小で済みます。
電磁弁はヤフオクでオリフィス径5mmの低圧用を調達。2500円*4個=10000円也。銅管内径は10mm-0.8mm*2=8.4mmなので、もう少し径が欲しいところですが、5mm以上は一般的でなく倍以上高価になります。水圧はあまりかからないので0.1kg/cm3もあれば十分です。無駄に圧力が高いものは余計な電力を消費しますし発熱が大きくなります。電磁弁は動作中コイルが発熱するうえ、温水を通しているので熱的に厳しい条件ですが、さらに断熱材でパネルごと完全に覆うという暴挙に出ました。故障リスクより熱効率を優先したためですが、8年目の現在も無事動作しています。
パネルが揃ったところで床下に潜り、元の断熱材を剥がし、パネルを床下コンパネにネジ留めしてパネル同士を繋ぐ継手を締め込みます。

重力に逆らって真上に対して作業するのはかなり疲れます。自分の腕ってこんなに重いんだっけ、という感じで動きが遅いです。3分作業したら1分休まないと体が持ちません。肩幅ギリギリの高さしかないので体勢を入れ替えるのも大変です。動くたびにあちこち体をぶつけます。

床下は新築時の建材かす、外からの埃、ゴキブリ、ムカデ、ゲジゲジなどのミイラが積もり、動くたびに粉塵が舞い上がり狭い空間に停滞します。排気弁付きマスクとゴーグルは必需品です。ちょっと力を入れると吐いた息でゴーグルが曇りすぐ見えなくなるので曇り止めをたっぷり塗っておきます。1枚200円もするフィルターもすぐ詰まって息苦しくなってくるので、作業は2時間が限界です。

作業効率が悪いので1回の作業で2畳分貼るのが限界でした。普通の体勢が取れればなんてことはない作業内容なんですが。

完全防備での作業となるので真冬でも汗ばむ位で夏は暑くてとてもできません。狭くて動けない床下で虫に遭遇するのもいやなので床下作業は冬に限ります。

一部屋分終了したら水道のホースに繋いで水圧をかけて漏れを検査します。水道の栓を開くときはかなりドキドキしますが、期待に反し盛大な水漏れの音が床下から聞こえ、慌てて床下に潜りずぶ濡れになりながら漏水個所をチェックすることになりました。

継手が一部屋当たり平均50個あるので締め忘れていたり、斜めに締め込んでいたり、オーバートルクで締めて銅管が破損していたりが数カ所ありました。パネルを剥がして外で修理してまた床下に潜って取り付けてまた外に出て水道をつないでとやっているとそれだけで半日は潰れます。ミスは高く付くので極力避けたいのですが作業環境が劣悪なので集中力を持続するのが難しいです。
ずぶ濡れになりながら修理を繰り返してやっとの思いで水圧検査に合格したら、5cm厚グラスウールを詰めて元の断熱材で蓋をしていきます。

グラスウールは42cm*125cmが12枚入って2000円位だったと思います。縦半分に切るとちょうど幅が21cmとなり小根太の間隔とぴったり、長さも2枚でちょうど部屋幅の2.5mなので施工しやすかったです。4袋で8000円也。スタイロフォームの1/3ですが、断熱性能も値段相応だそうです。銅管の出っ張り部分を溝掘りする必要がないので採用しました。

ここまでくればもう一息、後は配管を熱源器(ボイラー)に接続するだけです。熱源器には灯油とガスがあり、ガスのほうが1/3程度のお値段ですが、自宅はLPガスのため当然燃料費は灯油の方が圧倒的有利ですので迷わず灯油を選択しました。都市ガスなら迷うところです。
ヤフオクで探しましたが特殊な商品なので出品が少なく、あっても使い込んだものが結構な相場だったのであきらめて新品を購入しました。ノーリツのOH-G640Y、熱出力6.4KWの最小の物ですが2LDKには十分でした。9万円也。
奥に見えるのはやはりノーリツの灯油風呂釜です。
富士通のホットマンという温水ファンヒーターの熱源器がほぼ同じもので、こちらはヤフオクにも出品が多くうまくいくと3万円程度で入手できますが、温水温度がOH-G640Yは60度に対しホットマンは80度であることと、床暖房用のリモコンとして一般的なものが使えないのでタイマー制御が難しくなることから床暖房熱源器への流用は諦めました。床暖房は温まるまで30分はかかるので、1日2回朝夕の自動ON・OFFのタイマー登録ができないと不便です。

ペアガラスでもない安普請のアパートの断熱性能では朝-5℃になる北関東内陸の冷え込みに床暖房だけで室温20℃には至らないので、本来の温水ファンヒーターとして別途購入し自分で取り付けました。強力でマイルドな温風で15畳のLDKが10分で25℃に達しますし、換気が必要なく空気が乾燥しない優れモノです。
====>と思って7年間毎朝使用していたのですが、床暖房の使い方が間違っていました。
灯油がもったいないからと夜9時頃には寝室以外の床暖房をOFFし、朝5時頃ONしていたのですが、冷え切った家屋全体を温めなおすには膨大なエネルギーを必要とします。
しかし室温を維持するだけならトロ火で十分なので、夜間も設定温度を下げて全部屋ONしておいても灯油の使用量はほぼ同じか、むしろ少ないことに8年目になってようやく気づきました。当然朝の快適度は段違いですし、夜間の室温が変化しないのでより熟睡できるようなりました。よってホットマンは日中雨や雪で冷え切った日に外から帰ってきた時など年数回しか出番がなく、この場合エアコン暖房の方が立ち上がりが速いので過剰投資となってしまいました。各部屋ごとに付けた電磁弁もあまり意味はなく、ケチケチ根性が災いしたようです。結論は床暖房は偉大ということです。

最初に温水を注水した時の感動は今でも覚えています。冷たいフローリングがじわじわと暖かくなっていく未体験の快感でした。床暖房の効用についてはあちこちで触れられていますので詳しく述べませんが、とにかく素晴らしいの一言で数百万円を賭ける価値はあります。

最初は5cm厚グラスウール+元の3cm発砲スチロールだけで断熱していましたが、灯油代が月2万円も掛かるのに加え灯油が値上がりする一方なので更に3cm厚スタイロフォームを投入して小根太ごと覆ってしまうことにしました。

そのままの1畳サイズでは床下点検口を通すことができないので1m*50cm位に切断して床下に搬入します。スタイロフォームは高価なので無駄を出さないよう図面と睨めっこして最適な切り出しサイズを決め切断しました。1畳あたり1000円なので24000円也。
根太を残して全てスタイロフォームで覆いました。
灯油代は月10000円程度で収まるようになり、この間灯油は60円から80円に値上がりしてますので燃費効率は2倍以上にアップしています。これは予想を遙かに上回る結果で材料費は2ヶ月で回収できたことになります。もっとも施工に正月休み全てを含め10日以上たっぷり掛かっているので日当の元を取るのは3年ほどかかりますが。

燃費だけでなく温水の最高温度が下がったようで、暖房感が更に自然なものになりました。熱源器は常に燃焼しているわけではなく戻り温水の温度を常に監視して一定以上になると燃焼をカットしますので、戻り温度が以前より早く既定値に達するようになったためでしょう。
2LDK+トイレ+脱衣所+玄関全て床暖房にして、更に温水式衣類乾燥機と浴室に温水暖房器を設置。給湯と風呂も併せて冬季1ヶ月の灯油代1万円はこれ以上ないパフォーマンスと自負しています。熱効率を優先して設計し現場に合わせて手間をかけないと熱損失は大きくなります。既製品を組み合わせただけではこのパフォーマンスは出ません。設計により燃費は数倍も変わってきます。ろくな断熱をせずLPガス熱源器を使用した場合、燃料費が月5万円を超えることもありえます。
熱を逃がさないよう隅まで端材を使って隙間なく埋めています。配管には熱損失の少ない断熱チューブ入ポリエチレンペア管を使用し、さらに上から水道管用の分厚い断熱材を被せ最短距離でパネルまで温水を通しています。500円/mで20m使用したので10000円也。
概算費用ですが、
・熱源器(OH-G640Y)                   90000円
・リモコン(インテリジェント通信)  2500円* 4個 = 10000円
・灯油タンク(90L)                                               7000円
・灯油配管(8mm銅管)及び継手             5000円 
・銅管(10mm径肉厚0.8mm)           300円*220m= 66000円
・アルミ板                2200円*24枚 = 52800円
・アルミテープ              980円*10巻 =   9800円
・銅管継手                180円*200個= 36000円
・銅管エルボ                                40円*200個 =  8000円
・ソルダー、フラックス等                                      5000円
・電磁弁                2500円*   4個 = 10000円
・ポリエチレンペア配管         500円*  20m = 10000円
・配管接続継手            300円 * 30個 =  9000円
・グラスウール                         2000円 *  4袋 =  8000円
・スタイロフォーム          1000円 * 24枚 =24000円

     合    計                     350600円

完成状態からの逆算なので、材料損失1割、諸経費1割としても50万円程度です。   
 
施工時間ですが4年掛かりです。
といっても作業は冬季の休日だけですので、実動100日程度です。

1年目はLDKを施工しましたが熱源器等基本部分もありましたので正月休みを含め12月から3月の土日祝は全て作業に充てました。
2年目、3年目は1部屋ずつですが1部屋分作るのに10日は掛ります。
4年目は全ての部屋床下にスタイロフォームを貼り配管等も断熱を強化して完成形になりました。
床下からの施工は作業環境が劣悪で作業効率も悪いですが、

・作業を途中で中断しても床に穴が開いたまま、ということがないので生活に影響がなくマイペースで作業できる。
・床下は柱や壁が少なく面一なのでパネル形状の加工や位置合わせは最小限で済む。
・床上は一切いじらないので家具を移動する必要がないし仕上げなどの精密工作が必要ない。

これらの利点からDIY向きです。

劣悪環境での作業で寿命が1年縮みましたが、床暖房の効用で3年は延びると思います?

このアパートは2015年6月一杯で退去し、10年お世話になったこの床暖房とも涙のお別れをしたのですが、 新たに入居した中古一戸建平屋住宅にも再び床下からDIYで床暖房を施工しました。

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